薄毛は病院でも治らないと言われていたのに、なぜ現在は「病院で治療しよう」と言われ るようになったの?

薄毛は病院で治療

薄毛の悩みは「お医者さんに相談しよう」というTVコマーシャルが放映されたのは2005年でした。近代の臨床医学が成立してから200年以上も対象外だった薄毛の治療が、なぜ近年になって「治療の対象」になったのでしょうか?この記事ではその理由について分りやすくご説明します。

ある治療薬の治験中に偶然発見された、毛髪を増やす作用

アメリカのメルク社という製薬会社が開発していた前立腺肥大の治療薬が、「プロンスカー」という商品名で1992年に認可されました。ところが、その薬の治験に参加した男性たちから「髪の毛が増えた」とか「抜け毛が減った」という報告が数多く寄せられたのです。
この予期しない副作用(?)に色めき立った製薬会社は、発毛作用という観点からこの薬の成分(フィナステリド)を研究し直して開発したのが「プロペシア」です。
プロペシアは1997年にアメリカで承認されてから世界60余カ国で承認され、日本でも2005年に発売が認可されました。
人類と薬の歴史のなかで「毛生え薬」は、何千年もの間「あればいいのに」という願望の下で、怪しげな民間薬が幅をきかせる舞台でした。21世紀に入ってようやく、人類史上初めて、医学が要求するエビデンスを備えた「毛生え薬」が誕生したのです。
治療薬が見つかるまでは、「薄毛」「若ハゲ」は病気とはみなされませんでした。病院に来られても治しようがないので、「あまり気にしないように」などと言ってお引き取りいただくしかなかったのです。
バイアグラという薬が発売されて「ED外来」ができたように、プロペシアが発売されて「発毛外来」ができました。これが、薄毛の悩みは「お医者さん相談しよう」となった経緯です。

薬が見つかってAGA(男性型脱毛症)という病名も付いた

「この成分になぜ発毛作用があるのか」という研究の過程で、男性にだけなぜ若いうちから薄毛が進行するのか、という理由も明らかになってきました。そこで付けられたのがAGA(Androgenetic Alopecia―男性ホルモンによる脱毛症)という病名です。
研究によって分ったのは、薄毛の原因になるのは、男性ホルモンの一部のジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンだということです。DHTは男性ホルモンの代表であるテストストロンから作られますが、同じ男性でもDHTを作る酵素が少ない人は、若いうちから薄毛が進行することはありません。
そして、承認された薬の成分であるフィナステリドに、DHTの生成する酵素の働きを阻害する作用があることが実証されました。

待望の治療薬が誕生したのに、治療を始める人が少ないのはなぜか

上記のように、いわば待ちに待った治療薬が誕生したのに、今のところ薄毛に悩む男性がこぞって治療を始めるという状況ではありません。その大きな理由として考えられるのは、AGAの治療が健康保険の適用外だということです。
薄毛は生命には関わらない病気だからかもしれませんが、保険を適用しないという国の姿勢は、20代、30代で薄毛に悩む男性からすると、冷たい態度と感じられることでしょう。
保険がきかないという理由以外にも、「薄毛にきく薬を発明したらノーベル賞ものだ」と長年言われてきたこともあって、効果が医学的に実証された治療薬ができたと言われても、にわかには信じられないという気持ちがあるのかもしれません。
インターネットなどでフィナステリドの副作用が過大に云々されるのも、この「信じられない」という気持ちの裏返しという面がありそうです。確かにフィナステリドには、他のお薬と同じように一定の副作用はありますが、医師の処方にしたがって正しく服用すれば、過剰に心配する必要はありません。
発毛の程度には個人差があることも、治療に踏み切れない理由の1つかも知れません。お薬が見つかり、発毛外来ができてからまだ15年ほどなので、世間に周知されず、疑問や不安もあるの仕方ありませんが、後頭部の薄さを気にして暗い気持ちになるよりは、思い切って治療してみることをおすすめします。

おわりに

薄毛の悩みは「お医者さんに相談しよう」と言われるようになったのは、治療薬が見つかって病院で治療できるようになったからです。そういうお薬がなかった時代に青年時代をすごした50代、60代の男性から見たら、今の若い男性は羨むべきチャンスに恵まれています。

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